角秀一ダイアリー

だいじょうぶ3組

大ベストセラー「五体不満足」の著者・乙武洋匡(おとたけひろただ)さんが3年間にわたる小学校教師としての体験をもとに描いた小説「だいじょうぶ3組」が映画化されました。

先日、観てきましたが、最近の日本映画の中では結構いい映画だったなと思います。

この映画は28人の児童のクラス5年3組を舞台に、乙武さん自身が教師役として出演しています。また、乙武さん演じる先生を補助するもう一人の教師役にTOKIOの国分太一さんが主人公として登場します。

クラスに乙武さんと国分さんの2人の先生が一緒に授業を行うというものですが、児童達がどんどん成長していく様子が感動的でした。

この映画は、乙武さんが全てを傾けた人間教育です。

演技をする映画なのに、児童役をした子供たちが初めて乙武さんと出会ったときの眼差しは、リハーサル無しのシーンだったのでとても新鮮でした。

そこから始まる数々の授業内容は、人とは何かを深く考えさせられるもので、

観ていて、心が膨らんでいくうれしさを感じました。

テレビで見る乙武さんはいつもニコニコにていますが、この映画では真剣なまなざし、表情がほとんどで、彼が泣くシーンも切羽詰まります。その横で国分太一さんの目がどんどん充血していって、涙がたまっていくシーンも感動です。

児童の役をした中で三船海斗君という俳優が出ていますが、彼の演技がとてもよかったです。彼は、お茶のコマーシャルで宮崎あおいさんに横断歩道で花束を渡すコマーシャルに出ていたことがありましたが、末恐ろしい子役です。

乱造とも言われる日本映画の中で、ここ最近では傑作だと感じました。ぜひ観て欲しいですね。

≪角秀一の読まずに死ねるかのコーナーその55≫

【モンスターU子の嘘/越智月子著/社】☆☆☆☆ 

ホラーでもないのに怖い。昭和63年。石山詩子が常習賭博の現行犯で逮捕された。
フリーライターの蒲田は拘置所で詩子と面会する。そこで詩子が話す内容から少しずつ彼女に取りつかれていく。彼だけではない。詩子の周りの多くの男たちがいつの間にか彼女の虜になっていく。
そして獄中の詩子は、ある計画を実行に移す。 肝の据わった究極のママ。言葉巧みに人々を悪の世界に引き込んでいく。誰も死なない。しかし心がずたずたに切り刻まれていくようで気味が悪い。それでも読み込んでしまうのは詩子の魅力に読者も虜になってしまうからかもしれない。怖い怖い。

 

ゲキ×シネ

 先日、映画館で演劇を観て来ました。

「劇団☆新感線」の演劇を映画館で上映する「ゲキ×シネ」というんだけど、
「劇団☆新感線」といえば日本トップクラスの人気があって、今まで10万席が即完売というくらいチケットの入手も困難な舞台なんだよね。

今回の「ゲキ×シネ」は「劇団☆新感線」の代表作になっている「髑髏城(どくろじょう)の七人」の舞台公演を劇場用に映像化したものです。

役者は、小栗旬、森山未來、早乙女太一、小池栄子、勝地涼、仲里依紗といった人気若手俳優が出演しています。

なにがすごいかというと、芝居を18台のカメラで映し出すスピード感、アップで捉えた汗だくの顔、そしてとっても重厚な音楽。

小栗旬にしても、森山未來にしても、今までの彼らの演技と比べるとはるかに激しく、それだけにカッコいいんですよね。キレています。

戦国時代の物語なので、立ち回りもすごくてですね。まあ早乙女太一の真骨頂でしょう。

さらに全編に散りばめられたギャグと人情に訴えるセリフ。笑えて、ほろっとさせて、しかもかっこいい。3時間という長い上映時間だったけど。終わった後は席を立てませんでした。ツイッターなんか賞賛の嵐でとんでもないことになっていますよ。

女性ファンが多いんだけど、男性が観てもかっこよさがわかります。

この「髑髏城の七人」は、全国の映画館で上映中で、東京の映画館では席がないくらい満席らしいですが、

山陰では現在、出雲市のT-JOY出雲のみで公開中となっています。

最高のエンタテイメント作品なのでぜひご覧になってみてください。

 

 

≪角秀一の読まずに死ねるかのコーナーその54≫

【ブルーマーダー/誉田哲也/光文社】☆☆☆☆

「ストロベリーナイト」シリーズ最新作。警察官・姫川玲子が今回も奔走しています。
どうも竹内結子のイメージが強すぎるのですが、原作はかなりエグイ。映画やテレビドラマでは表せないのも本の良いところです。
ただ前回紹介した「64」が圧倒的に面白かった警察小説だったので、物足りなさはありますが、「ストロベリーナイト」も国内警察小説の中では非常に面白いと思います。
新たに姫川の前に立ちはだかる連続殺人鬼ブルーマーダー。都会って怖いね。 

レインメイカー

なぜにあんな高いドロップキックが出来るのか?

失われた30年とも言われる日本プロレス界に彗星のごとく登場したオカダ・カズチカ。

タイガーマスク以来の衝撃なのだ。

時代は強烈なヒーローを欲している。スポーツ、芸能、政治。ヒーロー見たさに多くのファンが詰めかける。街頭パレードは最たるものだ。そこに消費行動が起き、束の間の好奇心が満たされていく。

金の雨が降る。「レインメイカー オカダカズチカ」が今を象徴している。

 

 

≪角秀一の読まずに死ねるかのコーナーその53≫

【64/横山秀夫/文芸春秋社】☆☆☆☆☆

「半落ち」「クライマーズハイ」など著書が後に名作映画となっていく社会派小説家・横山秀夫。直木賞との決別宣言をして以来、7年ぶりの大作を発表しました。当然の如く、各誌年間ランキングでは1位を独占。彼の評価と人気の高さが証明されました。

今作は、昭和64年に起きたD県警史上最悪の誘拐殺害事件を巡り、刑事部と警務部が全面戦争に突入。更に記者クラブとの軋轢に苦しみながら、主人公である広報担当三上は警察官としての真の矜持を持ち続けようとするのです。

読み始めは最近はやりの警察小説でしかないなあと思っていたのですが、後半3分の1を過ぎたところで遂に横山ワールド炸裂!瞬間電気に打たれたように背筋がピンと来ました。そこからは平成の松本清張と称される彼の世界に没頭していきました。

007

シリーズ最高の興行収入を記録するなど話題を呼んでいる『007』シリーズ最新作『007 スカイフォール』。公開初日に早速観てきました。
はっきり言って・・・最高に面白い!2時間30分があっという間。超弩級のアクションシーンも全編散りばめられていて飽きないですよ。

特に今回は映像が綺麗です。風景描写にこだわるのがサム・メンデス監督らしい。007役は歴代ショーン・コネリーもロジャー・ムーアもピアーズ・ブロスナンもいいですが、ダニエル・グレイグの人間臭さも好きですね。

おすすめ映画なのでぜひ観てください!

 

≪角秀一の読まずに死ねるかのコーナーその49≫

【神様のカルテ3/夏川草介/小学館】☆☆☆☆

今年も読みました。信州にある24時間365日対応の病院で働く内科医、イチト君の頑張り。

今回は赴任してきた女医さんとの攻防、恩師との別れを縦軸に。そして彼を支えるハルさんや下宿のみなさんとの交流を横軸に更に心温まるストーリーが紡がれていきます。信州の景色の移ろいが見事に表現されているのも好感が持てます。

 

≪角秀一の読まずに死ねるかのコーナーその50≫

【光圀伝/冲方 丁/角川書店】☆☆☆☆

著者がヒット作『天地明察』に次いで放つ時代小説は水戸光圀の生涯。黄門様はどんな青春時代を過ごしたのかとおもいきや、破天荒なお兄ちゃんだったんですよ。その彼が何故この世に歴史が必要なのかを問い続け、生涯をかけて「大日本史」の編纂という大事業を何遂げます。孤独感と戦いながら邁進する水戸光圀の生き様に大感動させられました。

 

≪角秀一の読まずに死ねるかのコーナーその51≫

【獣の奏者~王獣編/上橋菜穂子/講談社文庫】☆☆☆☆

このシリーズにはまってしまいました。王獣編では凶暴な猛獣が次第に主人公の少女エリンに心を開き、国の危機を脱していく物語です。エリンの健気にも強い意志で進む姿に元気づけられます。広い世代に読んで欲しい一冊ですね。心を浄化してくれる日本ファンタジー界の金字塔です。

 

≪角秀一の読まずに死ねるかのコーナーその52≫

【嵐のピクニック/本谷有希子/講談社】☆☆☆

なんだこの本?今女性の間で話題になっているそうです。妄想を本にした?ような短編集です。ボディビルにのめりこむ主婦やカーテンの膨らみが気になって仕方ない主婦など、ホラーではないのに怖さを感じます。コメディではないのに笑ってしまいます。とにかく不思議な小説でした。

夏の終わり

来週の予想最高気温が一度また一度と下がっています。
グラフはゆっくりと右肩下がり。一度傾いた傾斜はその速度を上げ、急速に季節は変わっていきます。その坂をたくさんの夏の思い出を映したビー球が転がっていくように、夏の終わりを迎えました。

ビー玉遊びを思い出しました。
庭にいくつもの穴をあけ、友達同士でよく遊んだものです。相手のビー玉を弾きながら、どちらが早く全ての穴に入れることができるか。ゴルフとカーリングを一緒にしたようなルールでした。
ビー玉のビーとはビードロのこと。ポルトガル語でガラスを意味します。縁日では涼やかな光を帯び、模様の入ったビー玉がきれいでした。

夏の終わり。スタジオのある松江市では、今日、武内神社のお祭りです。

≪角秀一の読まずに死ねるかのコーナーその48≫
【獣の奏者(1)闘蛇編/上橋菜穂子著/】☆☆☆☆
高校生にぜひ読んで欲しい本です。
シリーズ総セールス130万部を誇る日本ファンタジー界最高峰に君臨する傑作。「精霊の守り人」も面白かったのですが、この作品も学生から大人までのめり込むことができる物語です。
獣ノ医術師の母と暮らす少女エリン。ある日、獣である闘蛇が何頭も死に、その責任を問われた母は処刑されてしまいます。孤児となったエリンはやがて、王国の運命を左右する立場に立たされることになります。
地上で繰り広げられるスター・ウォーズのような人間と獣たちの戦い。母の愛を一身に受けて育ったエレンの聡明さと勇気。読んでいて、たまらなく彼女を応援したくなるのです。続編が楽しみです。

ウォーカー

キョーレツな海外ドラマ「ウォーキング・デッド」に出会った夏。「プリズン・ブレイク」のサラが出演しているので観始めました。
内容は・・?!?!!!!めちゃくちゃです。
ウォーカーと呼ばれているキャラクターが凄いことになっています。出演コンテストも開かれて、優勝したのは日本人女性だとか。
日本のドラマはシーズン1・2・・とあまり続かないのですが、アメリカは視聴率が高いと続編が用意されていますよね。しかし最近はアメリカでもシリーズが続くドラマが少なくなっているようです。そんな中、好調なのが「ウォーキング・デッド」!心して観てください。子供は観ちゃだめかも。
「フォーリング・スカイズ」も「ER」のカーター先生が出ているので観てみたいですね。

≪角秀一の読まずに死ねるかのコーナーその47≫
【平成猿蟹合戦図/吉田修一著/朝日新聞出版】☆☆☆
夏の暑さに負けて本から離れてしまっていました。最近お気に入りの吉田修一の作品から秋の読書スタートです。長崎から上京した子連れのホステス、事件現場を目撃するバーテン、冴えないホスト、政治家の秘書を志す女、世界的なチェロ奏者、韓国クラブのママ、無実の罪をかぶる元教員の娘、秋田県大館に一人住む老婆……8人の主人公たちが社会の悪と戦う正義感丸出しの物語です。前半は「悪人」を彷彿させる展開。後半がありきたりですが、人物を描くのは上手いねえ。

サイリュウムを振ってみた

それは、とある日の夜。
僕は平成の太陽を浴びて育ったエネルギーが爆発している空間にポツンと佇んでいたのです。
意味がわからないでしょ?
で、その宴が終わりを告げる頃、隣のお姉さんが一本の光る棒を差し出したのです。
お前も振れとの暗示でした。暗闇の中で示されたので、まさに暗示でした。
生まれて初めてのサイリュウム体験でした。
光のエネルギーはキレイでした。

≪角秀一の読まずに死ねるかのコーナーその46≫
【太陽は動かない/吉田修一著/新潮社】☆☆☆☆
中国企業と中国政府のせめぎ合い。日本企業同士の暗躍。新エネルギー開発の利権争いの渦中に投げ込まれた主人公の産業スパイ。上海のサッカー試合で起きた爆発事件とウィグルの反政府勢力。スパイ同士の誘拐事件。特許技術を握る国会議員。本当に最後まで誰が味方で敵かわからないストーリーがノンストップアクションで展開していきます。去年の「ジェノサイド」を彷彿させる今年上半期最高の超弩級エンターテイメント小説でした。
著者は、一昨年の日本アカデミー賞作品「悪人」の原作者・吉田修一。またもや芥川賞作家の彼が直木賞作品を凌ぐ大衆娯楽小説を書き上げています。

作曲家・渡辺岳夫

1970年に放送されたTVドラマ「燃えよ剣」全26話をDVD(全7巻)で観終えました。
主人公は新選組副長・土方歳三。新選組結成から函館五稜郭まで懸命に走り抜けた男の物語です。
この司馬遼太郎の傑作は何度か映画やドラマになりましたが、この栗塚旭主演の「燃えよ剣」が一番です。
DVDの巻末には当時の俳優や監督が登場して制作秘話を話してくれます。40年経っているので、ドラマ出演当時は30歳の青年でも今は熟年の70歳。しかし当時の青春を語る彼らの言葉一つ一つには年月を超えたエネルギーを感じます。素晴らしい20歳代30歳代を過ごされたのでしょう。
20歳~30歳前半で日本の将来を変えていこうとした新選組隊士達の生き様が胸を打ちました。
「男はやるだけやって死ねばいいんだ」土方が函館に向かう前に語った一言です。
また、このドラマの音楽を担当したのが渡辺岳夫。彼の作り出す曲が臨場感を増します。初めて「燃えよ剣」で日本のドラマ史上初のストリングスを取り入れた作曲家です。彼は「巨人の星」「キャンディキャンディ」「魔法のマコちゃん」「キューティーハニー」「アタックNo.1」「アルプスの少女ハイジ」「原始少年リュウ」「天才バカボン」「機動戦士ガンダム」「ミュンヘンへの道」など多くのアニメ主題歌を作曲しています。すべてが名曲ではないですか!
現代のポップスにもロックにも多用されるストリングスアレンジ。彼が日本音楽シーンに与えた影響は計り知れない気がするのです。

≪角秀一の読まずに死ねるかのコーナーその45≫
【鋼の魂ー僕僕先生ー/仁木英之著/新潮社】☆☆☆☆
舞台は唐の時代の中国大陸。奥地の湖に沈む宝を追ってやって来た仙人の僕僕先生一行。空飛ぶ女神、しゃべる馬、妖術を使う男など、お供が皆はちゃめちゃなキャラクター設定。でも正義の味方!群雄割拠の大小の国々が覇権を争う街で大騒動が展開されます。「孫悟空」「水戸黄門」「インディージョーンズ」を混ぜ合わせたような物語でした。

街角発見

「カット ○○○円。
 シャンプー ○○○円。
 ワイルドだろー」

おしゃれな美容室の前に置かれた小さな黒板に書かれていました。
スギちゃんのフレーズ(言葉の最後を上げる)のが全国の幼稚園で流行っているようです。他は会社のおじさん連中が使っていると聞きました。
でもこの言葉、お店のちょっとした使い方がさらりとしていて、逆に笑ってしまいました。

≪角秀一の読まずに死ねるかのコーナーその44≫
【贖罪の奏鳴曲(ソナタ)/中山七里著/講談社】☆☆☆
弁護士の御子柴礼司は、ある晩、雑誌記者の死体を遺棄。警察は御子柴に辿りつき事情を聴くが、彼には鉄壁のアリバイがあった。
という前半部分から、この物語は読者をミスリードしていきながら最後にドンデン返し。畳みかけて最後の最後にさらなるドンデン返し。中盤の人間模様が少ししつこいのですが、構成も人物描写も納得できました。
今まで読んだミステリー小説の中で大ドンデン返しの傑作だったのは「イニシエーション・ラブ/乾くるみ」「葉桜の季節に君を想うということ/歌野昌牛」「燃える地の果てに/逢坂剛」の3冊。最後の最後に本を投げてしまったこともありました。自分もぶっとび状態になります。

薫風

風薫る5月。ん?どんな匂いがするのかクンクンしてみても美味しそうな香りはしてこないなあ。
でも暖かな空気は鼻の奥に緑を感じさせます。緑とは色ではなく、芽吹く・鮮やかという意味もあります。緑の黒髪もそこから表現されていますね。

大型連休の狭間。5月は心地よい薫風の中で始まりました。ここ数年で山陰の道路は格段に整備されました。車で遠出をするには便利になったものです。ただお出かけ前の車の点検もしっかりと。思わぬタイヤの破裂やエンジントラブルで折角の休日が台無しにならないように。自分の車は大丈夫だと過信しないでくださいね。

≪角秀一の読まずに死ねるかのコーナーその43≫
【晴天の迷いクジラ /窪美澄著/新潮社】☆☆☆☆
去年の「本の雑誌」1位、本屋大賞2位の「ふがいない僕は空を見た」の著者が発表した2作品目です。
主人公は3人。会社は倒産しそうで恋人にもふられた青年。子供を捨て、経営する会社も倒産しそうな女社長。親の干渉に苦しむ引きこもりのリスカ少女。壊れかけた三人が転がるように行き着いた海辺の村で、自己再生を歩んでいきます。
著者のテーマは今回も「生」。今作も出だしは重く、徐々に暖かな光に包まれていく読後感のいい小説でした。「嫌われ松子の一生」「八日目の蝉」「最悪」などを読まれた方には心に突き刺さるはずです。